n8nの料金は高い?Cloud Run×Supabaseで「ほぼ無料」のセルフホスト環境を作る方法

n8nはZapierやMakeよりも圧倒的に安く、かつ自由度が高いです。
特にGoogle Cloud RunとSupabaseを組み合わせたサーバーレス構成なら、月額0円からの運用が可能です。
- 「Zapierの料金が高すぎる」
- 「n8nを使いたいがサーバー管理が面倒」
- 「安くて速い環境を作りたい」
このような悩みを抱える中小企業のDX担当者やエンジニアに向けて、n8nとZapierの料金比較、VPSやPaaSとの違い、そしてTerraformを使った「最強のセルフホスト環境」の構築手順をハンズオンで解説します。
本記事は、Cloud Run・Supabase・Terraformでの環境構築支援実績を持つ中小企業診断士(conets)が作成しています。
n8nの料金は本当に安いのか?Zapier比較でわかる最適な選び方

Zapierは月額約3,000円から始まりますが、タスク数による従量課金が高額になりがちです。
一方n8nのクラウド版は月額20ユーロ(約3,200円)からですが、セルフホスト版ならソフトウェア利用料は無料です。
Google Cloud Run(無料枠200万リクエスト)を活用すれば、サーバー代のみで済み、コスト削減率は最大90%以上に達します。
DX推進において最大の壁となるのが「ランニングコスト」です。特に自動化ツール(iPaaS)は、処理数が増えるほど料金が跳ね上がる傾向にあります。
【比較表】Zapier vs n8nクラウド vs n8nセルフホスト
以下の表は、月間タスク数に応じたコスト比較です。
Zapier(有料)
月額基本料
$19.99(約3,000円)
タスク数制限
厳しい (750タスク〜)
1万タスク時のコスト
約20,000円/月
サーバー代
不要 (SaaS)
カスタマイズ性
低い
n8n (クラウド版)
月額基本料
€20〜 (約3,200円)
タスク数制限
比較的緩い
1万タスク時のコスト
約8,000円/月
サーバー代
不要 (SaaS)
カスタマイズ性
中
n8n (セルフホスト)
月額基本料
無料
タスク数制限
無制限
1万タスク時のコスト
サーバー代のみ
サーバー代
0円〜 (Cloud Run等)
カスタマイズ性
高い
結論として、タスク数が増えれば増えるほど、n8nセルフホストのコストパフォーマンスが圧倒的になります。
Zapierで月数万円かかっていたコストを、n8nセルフホストならサーバー代(数百円〜数千円)だけに圧縮できるのです。
「セルフホスト」3つの選択肢と難易度比較:初心者はどれを選ぶべき?

セルフホストには主に3つの方法があります。
- 「VPS(自前サーバー)」は安価ですがOS管理が面倒(難易度:高)
- 「PaaS(Render等)」は簡単ですが無料枠の制限が厳しい(難易度:低)
- 「サーバーレス(Cloud Run)」は初期構築こそTerraformが必要ですが、運用管理が不要でコストと性能のバランスが最も優れています(難易度:中)
セルフホストにはいくつかの方法がありますが、それぞれ一長一短があります。
結論から言うと、中小企業にはサーバーレス(Cloud Run)が最適です。
VPS(Oracle Cloud等)
結論
安さは最強だが管理コスト大
特徴
自分でサーバーを借りて構築する(例:さくらのVPS、Oracle Cloud無料枠)
メリット
自由度が高く、Oracleならハイスペックな無料枠がある
デメリット
OSのアップデートやセキュリティ対策を自分でやる必要がある。
サーバーが落ちたら自分で復旧しなければならない
コメント
専任エンジニアがいない企業にはリスクが高いです
PaaS(Render/Railway)
結論
手軽だがコストと性能に限界
特徴
コードをアップするだけで動くサービス
メリット
管理が楽
デメリット
無料枠だと「スリープ(一定時間アクセスがないと停止)」し、再起動に数十秒かかる
有料プランにすると割高になる
コメント
お試しには良いですが、実務での安定運用には不向きです
サーバーレス(Cloud Run)
結論
管理不要でコスパ最強
特徴
Googleが管理するコンテナ基盤。
メリット
インフラ管理不要、オートスケール、使った分だけ課金
デメリット
構築(Terraform等)に少し知識が必要
コメント
一度構築してしまえば、後は放置でOK。
運用コストも含めると、中小企業にとっての最適解です
なぜ「Cloud Run × Supabase」なのか?月0円運用を実現する最強構成

Google Cloud Runは「使った分だけ課金」されるサーバーレスコンテナで、リクエストがない時は料金が発生しません。
n8nのデータベースとしてPostgreSQL互換のSupabase(無料枠500MB)を組み合わせることで、完全なサーバーレス構成が実現します。
Google公式でもコンテナのポータビリティとオートスケールが推奨されており、突発的なアクセス増にも自動対応できます。
「セルフホスト」と聞くと、「サーバー代がかかるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、「Cloud Run」と「Supabase」という現代的な技術を組み合わせることで、その常識は覆ります。
サーバーレスのメリット:アイドル時0円とオートスケール
Google Cloud Runは「サーバーレス」と呼ばれる技術です。
最大の特徴は「動いている時しかお金がかからない」こと。
夜間や休日など、誰もワークフローを使わない時間は、インスタンス数がゼロになり、課金もゼロになります。
逆に、大量のアクセスが来た時は自動でサーバーが増え(オートスケール)、処理をこなします。
Google Cloudには手厚い無料枠(月間200万リクエストなど)があるため、中小企業の規模であれば、多くの場合無料枠内で収まります。
Supabaseの活用:マネージドDBを無料で手に入れる
n8nを動かすにはデータベース(PostgreSQL)が必要です。
通常、AWS RDSなどのデータベースサービスは高価(月数千円〜)ですが、Supabaseを使えば解決します。
Supabaseは500MBまで無料のデータベースを提供しており、n8nの設定データや実行ログを保存するには十分な容量です。
これにより、DBコストもゼロに抑えることができます。
【ハンズオン】Terraformでn8nをGoogle Cloudに一発デプロイ
TerraformとTaskを使用し、コマンド一つでn8n環境をGoogle Cloudに構築する手順を解説します。
手動での複雑な設定を排除し、コードベース(IaC)で管理することで、誰でも再現性高くセルフホスト環境を作れます。
必要なのはGoogle CloudアカウントとSupabaseアカウントのみです。
ここからは、実際にCloud Run × Supabaseでn8n環境を構築する手順を解説します。
複雑な画面操作は不要です。Terraformというツールを使って、コマンド一発で自動構築します。
※技術に詳しくない方へ
以下の手順はコマンド操作を含みます。
「ちょっと難しそうだな…」と感じた場合は、無理をせずconetsの構築代行サービス(無料相談)をご利用ください。
プロが数時間で環境を整えます。
STEP 0:事前準備(ソースコードの取得とツールのインストール)
まず、今回の構築に使う「テンプレートコード」をGitHubから取得(クローン)し、必要なツールをPCにインストールします。
1. テンプレートコードの取得
ターミナルを開き、以下のコマンドを実行してコードを手元にダウンロードします。
git clone https://github.com/ssk9597/n8n-cloudrun-template
cd n8n-cloudrun-template2. 必要なツールのインストール
Macの場合:
# Terraformのインストール
brew install terraform
# Google Cloud SDKのインストール
brew install --cask google-cloud-sdk
gcloud init
# Taskのインストール
brew install go-task/tap/go-taskWindowsの場合:
# Terraformのインストール
choco install terraform -y
# Google Cloud SDKのインストール
choco install googlecloudsdk -y
gcloud init
# Taskのインストール
choco install go-task -ySTEP 1:GCPとSupabaseのプロジェクト設定
1. Google Cloud (GCP) 側

GCPコンソールで新しいプロジェクトを作成します。
以下のAPIを有効化します(検索窓で検索して「有効にする」を押すだけ)。
- Cloud Run API
- Secret Manager API
- Cloud Storage API



ここまでできればOKです。
2. Supabase 側
Supabaseで新規プロジェクトを作成します。

Databaseの設定画面から「Connect」をクリックします。

「Connection string (URI)」をコピーしておきます。
Host: db.xxxxxx.supabase.co
User: postgres
Password: (設定したパスワード)3. 設定ファイルの編集
ダウンロードしたコード内の .env.example を .env にリネームし、以下を書き換えます。
export PROJECT_ID="あなたのGCPプロジェクトID"次に secrets/terraform.tfvars.example を secrets/terraform.tfvars にリネームし、Supabaseの情報を記入します。
initial_db_host = "db.xxxxxx.supabase.co"
initial_db_user = "postgres"
initial_db_password = "あなたのパスワード"STEP 2:Taskコマンドでデプロイ実行
準備ができたら、以下のコマンドを順番に実行するだけです。
# 1. 環境変数の読み込み
source .env
# 2. GCPへのログイン
gcloud auth application-default login
unset GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS
# 3. 権限付与
gcloud projects add-iam-policy-binding $(gcloud config get-value project) --member="user:$(gcloud config get-value account)" --role="roles/storage.admin"
# 4. n8n環境の一括デプロイ
task deploy-allこれで、Cloud Run、Secret Manager、IAM権限などがすべて自動で作成され、n8nが起動します。
ターミナルの最後に表示されるservice_urlにアクセスすれば、あなただけのn8n環境の完成です。

初期起動はめちゃくちゃ時間がかかるので、10分程度待っていてください。
以下の画面が出てくれば完了です。お疲れ様でした。

Difyとの連携事例:低コスト・高パフォーマンスなAI×自動化基盤
Dify(AIアプリ開発)も同様にCloud RunやVPSでセルフホスト可能です。
n8nとDifyを同じGoogle Cloudリージョン(東京等)に配置することで、レイテンシ(通信遅延)を最小限に抑えられます。
Difyで判断し、n8nで実行する「AI社員」システムを、月額数千円以下の低コストで運用する構成案を提示します。
n8nの環境ができたら、次はDifyとの連携です。
Difyも同様にCloud RunやVPSでセルフホストすることで、低コストな「AI社員基盤」を作れます。
n8nを「手足」、Difyを「脳」として連携させる
おすすめの構成は以下の通りです。
- Dify: 複雑な文章生成や判断を行う「脳」
- n8n: データを運び、Difyに指示を出す「手足」
n8nの「HTTP Requestノード」を使って、DifyのAPIを呼び出します。
どちらもGoogle Cloud(または近いリージョン)にあれば、通信遅延(レイテンシ)は最小限です。
これにより、「問い合わせメール受信(n8n)→ AIが回答作成(Dify)→ Slack通知(n8n)」といった高度なフローが、爆速かつ低コストで動作します。
よくある質問(FAQ)
n8nのセルフホスト運用に関する疑問に回答します。
商用利用のライセンス制限(フェアコード)、Cloud Runのコールドスタート対策、セキュリティ設定など、実務導入時の懸念点を解消します。
QQ1. n8nとZapierの料金差はどれくらいですか?
処理数によりますが、月間1万タスクの場合、Zapierは約2万円かかりますが、n8nセルフホストならサーバー代(数百円〜数千円)のみです。1/10以下のコストになることも珍しくありません。
QQ2. Cloud Runの無料枠を超えたらいくらになりますか?
Cloud Runは非常に安価です。無料枠を超えても、小規模な利用であれば月額数百円程度で収まることがほとんどです。Google Cloudの料金計算ツールで試算可能です。
QQ3. Supabaseの無料枠でどれくらいの期間運用できますか?
Supabaseの無料枠(500MB)はかなり余裕があります。n8nの設定データや数ヶ月分のログ程度なら問題ありません。ただし、実行履歴(Execution Log)を永続的に残すと容量を食うため、n8n側の設定で「保存期間を7日」などに制限することを推奨します。
QQ4. Terraformを使ったことがなくても構築できますか?
はい、本記事のハンズオン通りにコマンドを実行すれば構築可能です。Terraformのコードを詳細に理解する必要はありません。
QQ5. n8nのアップデートはどうすれば良いですか?
terraform.tfvars ファイル内のdocker imageタグ(バージョン番号)を書き換えて、再度 task deploy-all を実行するだけで、新しいバージョンに更新されます。
QQ6. セルフホスト版で使えない機能はありますか?
クラウド版にある一部のAI機能や、n8n公式が提供するクラウドストレージなどは使えませんが、主要なワークフロー機能はすべて利用可能です。
QQ7. 商用利用(Fair Code License)の注意点は?
社内業務の自動化や、クライアントの受託開発で利用することは問題ありません。ただし、「n8nホスティングサービス」のように、n8nそのものを有料で他者に貸し出すビジネスはライセンス違反となります。
QQ8. Difyも同じ環境で動かせますか?
Cloud RunでDifyを動かすことも可能ですが、Difyは構成要素(Redis, Celery, VectorDB等)が多いため、n8nより構築難易度は上がります。Difyに関しては、Oracle Cloudの無料枠VPSなどを活用するのも一つの手です。
まとめ
n8nを最安で使う方法は「Cloud Run × Supabase × セルフホスト」であり、Zapierの1/10のコストで運用できます。
Terraformを活用すれば構築も容易であり、中小企業のDX基盤として最適です。
まずは無料枠でスモールスタートし、業務効率化の第一歩を踏み出しましょう。
n8nのセルフホストは、ハードルが高そうに見えて、実は現代のクラウド技術(Cloud Run)を使えば非常にシンプルかつ安価に実現できます。
- Zapierより圧倒的に安い
- PaaSより安定して速い
- VPSより管理が楽
この「Cloud Run × Supabase」構成こそが、中小企業がDXを推進するための賢いインフラ選択です。
無料相談の案内
- 「記事の手順通りにやったけどエラーが出た」
- 「Difyとn8nを連携させたシステム設計を相談したい」
- 「自社に最適な構成かどうかのセカンドオピニオンが欲しい」
技術的な構築や設計に不安がある方は、ぜひconetsの無料相談をご利用ください。
conetsの無料相談で得られる価値
- Terraform構築時のエラー解消支援
- 貴社の業務量に合わせた最適なクラウド構成(GCP/AWS)の提案
- Dify × n8n 連携による業務自動化の設計図作成
- コスト試算とセキュリティチェック
- 内製化に向けた技術レクチャーのロードマップ提示
本記事の構成は誰でもできるように書いていますが、最も多い失敗は「細かい設定ミス」です。
少しでも不安があれば、数時間で構築完了するプロに相談してください。
