Difyとn8nはどっちがおすすめ?中小企業DXにおける役割の違いと「AI社員」を作る連携パターン

Difyとn8nは「脳」と「手足」の関係ですが、中小企業が最初に導入すべきは、即効性のある「手足(n8n)」です。
まずは目の前の手作業を自動化し、その後にAI判断(Dify)を加えるのが成功の近道です。
- 「話題の自動化ツールを使いたいが違いがわからない」
- 「エンジニアがいなくても導入できるか不安」
- 「コストを抑えてDXしたい」
このような悩みを抱える中小企業の経営者やDX担当者に向けて、2つのツールの決定的な違い、実務での具体的な連携事例、そして自社に最適な導入ステップを中小企業診断士が解説します。
そもそもDifyとn8nとは?「脳」と「手足」の違いを解説

DifyはLLM(大規模言語モデル)を用いた「推論・生成(判断)」に特化したプラットフォームであり、人間のような思考プロセス(脳)を担います。
一方、n8nはAPI連携による「データ移動・定型処理(作業)」を得意とし、ルールに基づく実作業(手足)を担います。
Dify公式でもAPI連携が推奨されており、両者を接続することで、単体では不可能な「判断を伴う自動化」が実現します。
名前は聞いたことがあるけれど、具体的に何をするツールなのかイメージが湧かない方も多いでしょう。一言で言えば、「脳みそ」と「ロボットアーム」の違いです。
Dify(ディファイ)=「判断AI」:文脈を読み、答えを創る
Difyは、ChatGPTやClaudeなどのAI(LLM)を自社専用にカスタマイズするツールです。
ただのチャットではなく、「自社のマニュアルを読み込ませて回答させる(RAG)」ことや、「複雑な手順で推論させる」ことができます。
- 得意技:文章作成、要約、翻訳、曖昧な質問への回答
- 例:「このクレームメールに対して、過去の対応履歴を踏まえて丁寧な返信案を書いて」
n8n(エヌエイトエヌ)=「処理ロボット」:正確に作業を繰り返す
n8nは、いろいろなアプリ(LINE、Gmail、kintone、Excelなど)を線でつなぎ、データを自動で受け渡すツールです。
ここにAIのような「曖昧さ」はありません。決まったルール通りに、正確に動き続けます。
- 得意技:データ転記、通知、ファイル保存、定期実行
- 例:「毎日朝9時にkintoneの売上データを集計して、社長のLINEに通知して」
結論:中小企業は「n8n」から始めるべき。その理由は「即効性」

迷ったらn8n。これは断言できます。
中小企業DXの第一歩としてn8nが推奨される理由は、既存業務(メール転記やLINE通知)をそのまま自動化でき、即座に工数削減効果が出るからです。
一方、Difyは元データの整備やAIへの指示(プロンプト)設計が必要で、導入ハードルがやや高くなります。まずはn8nで「手作業」を減らし、余裕ができてからDifyの「知能」を足すのが鉄則です。
どちらも素晴らしいツールですが、リソースの限られた中小企業が「最初に」手をつけるなら、間違いなくn8nです。
理由1:「今やっている仕事」をそのまま置き換えられる
n8nが優れているのは、「今、手作業でやっている面倒なこと」をそのまま自動化できる点です。
- 「問い合わせメールが来たら、Excelに転記して、チャットで報告する」
- 「月末に請求書PDFをフォルダに保存して、ファイル名を変える」
これらはAIの高度な判断など不要で、単なる「作業」です。
n8nを導入すれば、翌日からこの作業が消滅します。「これができたら楽になる!」という効果が誰にでも分かりやすく、社内のDX機運を高めるのに最適です。
理由2:Difyには「データ整備」という高い壁がある
一方、Difyを使いこなすには準備が必要です。
- 「社内規定について答えるボット」を作るなら、まず社内規定がデジタル化され、整理されていなければなりません。
- 「AIに接客させる」なら、AIが変なことを言わないように入念なテストが必要です。
多くの企業では、この「元データの整備」で躓きます。
だからこそ、まずはn8nで足元の業務を整理し、余った時間でDifyの準備をするステップが正解です。
【比較表】機能・コスト・難易度の違い
n8nはワークフロー自動化ツールとして350以上の統合機能を持ち、DifyはRAG構築に強みを持ちます。
難易度においては、Difyは直感的なUIで非エンジニアでも導入しやすい(低〜中)一方、n8nはJSON操作等の知識が必要な場面があり(中〜高)、学習コストに差があります。
コストは両者とも無料から始められますが、本格運用ではクラウド費用が発生します。
n8n (処理ロボット)
おすすめ順序
✅ 最初に導入すべき
即効性
◎(目の前の作業が消える)
適した業務
・書類回収
・リマインド
・通知
・転記
導入難易度
低め(業務フローそのままでOK)
コスト
無料〜
Dify (判断AI)
おすすめ順序
その後のステップとしてOK
即効性
△(データ整備と調整が必要)
適した業務
・社内QA
・マニュアル作成
・顧客対応
導入難易度
やや高め(AIの概念理解が必要)
コスト
無料〜
業種別活用イメージ:福岡の中小企業ならこう使う!
建設業なら「勤怠集計(n8n)」と「安全マニュアルQA(Dify)」、飲食業なら「予約LINE連携(n8n)」と「アレルギー相談(Dify)」のように、業種によって最適なツールは異なります。
士業の場合は「顧客への定期報告(n8n)」で事務負担を減らしつつ、「法改正情報の検索(Dify)」で専門業務を支援するハイブリッド活用が有効です。
具体的なイメージを持っていただくために、業種ごとの活用例を挙げます。
建設・飲食・士業での具体的な使い分け
建設会社
n8nが合う場面
毎月の勤怠Excel集計
現場からの日報LINEを自動でフォルダ保存
Difyが合う場面
作業マニュアルのAI化
「この重機の操作方法は?」に即答するボット
飲食店
n8nが合う場面
予約台帳の自動連携
予約が入ったら店長LINEに通知し、お礼メール送信
Difyが合う場面
アレルギー対応のAI相談
メニュー表を学習させ、客の質問に答える
士業
n8nが合う場面
クライアントへの定期報告
通知を検知し、担当者にリマインド
Difyが合う場面
法改正情報のAI検索
過去の判例や条文を学習させ、所内の検索を爆速化
まずは左側の「n8n」で事務負担を減らし、その後に右側の「Dify」でサービスの質を上げるのが黄金ルートです。
実務ではこう使う!Dify × n8n の連携事例
Webサイトからの問い合わせ対応を完全自動化する場合、n8nでフォーム送信を検知(Webhook)し、Dify APIにデータを送信して回答案を生成させます。
その後、n8nが生成された回答をGmailの下書きに保存し、Slackへ通知します。この連携により、一次対応の工数を90%削減し、人間は最終確認のみを行うフローが構築可能です。
n8nで自動化に慣れてきたら、いよいよDifyを組み合わせて「最強のAI社員」を作ります。conetsが実際に支援した事例を紹介します。
事例:問い合わせ対応の半自動化フロー
ある企業では、毎日届く問い合わせメールへの一次返信に追われていました。
- 【検知】n8n: メール受信をトリガーに起動。件名と本文を取得。
- 【思考】Dify: メール本文をAPIで受け取り、内容を分析。「緊急度」を判定し、「返信文案」を作成してn8nに返す。
- 【行動】n8n:
- 緊急度「高」の場合 → Slackで担当者にメンション通知。
- それ以外 → Gmailの「下書き」に返信文を保存。
- 【確認】人間: 下書きを確認し、送信ボタンを押すだけ。
これにより、人間は「考える時間」と「書く時間」から解放され、最終確認という「責任」のみを担う形になりました。
kintone / HubSpot とのCRM連携
顧客管理(CRM)においても連携は強力です。
- n8n: 名刺データやフォームデータをCRM(kintone/HubSpot)に自動登録。
- Dify: CRM内の「過去の商談履歴」を読み込み、営業担当者が「A社のキーマンは誰?」と聞くと答えてくれるボットを構築。
データの「箱」への出し入れはn8n、中身の「活用」はDifyという分担です。
自社にはどちらが必要?無料診断フローチャート

導入すべきツールは「業務にAIの判断が必要か」で分岐します。定型業務の自動化ならn8n単体、チャットボット作成ならDify単体、複雑な業務代行なら両方の連携が必要です。
まずは月額コストを抑えられるクラウド版でPoC(概念実証)を行い、効果測定後に本格運用へ移行するスモールスタートを推奨します。
迷ったら、以下のステップで判断してください。
ステップ1:業務の「判断」の有無を整理する
自動化したい業務を書き出し、「Yes/Noチャート」で判断できるか考えます。
- Yes/Noで完全に分岐できる(例:金額が1万円以上なら上長承認)
→ n8n 単体でOK。 - 文脈やニュアンスの理解が必要(例:顧客の温度感に合わせて文面を変える)
→ Dify が必要。
ステップ2:連携する外部ツールの数を確認する
- Dify単体で完結するか?
Difyにも簡易的なワークフロー機能はありますが、kintoneやfreeeなどの外部SaaSとガッツリ連携するには機能不足です。 - 3つ以上のアプリを跨ぐ場合
→ n8n を基盤(ハブ)にして、Difyを部品として組み込むのが安定運用のコツです。
よくある質問(FAQ)
初心者がつまづきやすいポイントに対し、実務経験豊富な中小企業診断士が回答します。プログラミングの要否、日本語対応、無料プランの限界、Zapierとの違いなど、導入前の不安を網羅的に解消します。
QQ1. プログラミングができないと使えませんか?
基本はノーコード(マウス操作)で設定可能です。ただし、n8nで複雑なデータ加工をする際には、JavaScriptの知識が少しあると圧倒的に便利です。Difyは日本語でAIに指示を出せるため、プログラミング知識はほぼ不要です。
QQ2. ZapierやMakeとは何が違うのですか?
Zapier等は手軽ですが、従量課金が高額になりがちです。n8nは「セルフホスト(自社サーバーでの運用)」が可能で、処理回数が増えてもコストが一定(サーバー代のみ)である点が、中〜大規模運用において圧倒的に有利です。
QQ3. 日本語での利用は可能ですか?
はい、どちらも可能です。Difyは標準で日本語UIに対応しています。n8nの管理画面は英語ベースですが、昨今はブラウザ翻訳でも十分に使えますし、日本国内のコミュニティ情報も増えています。
QQ4. セキュリティ面で気をつけることはありますか?
クラウド版を利用する場合、各社のセキュリティポリシーに準拠します。機密情報を扱う場合、Dify・n8n共にAWSやGoogle Cloudなどの自社管理サーバー(オンプレミス環境)に構築することで、データ流出リスクを最小限に抑えられます。
QQ5. kintoneやHubSpotと連携できますか?
可能です。特にn8nは標準でHubSpot等のノードを持っていますし、kintoneもHTTP Request機能を使えばAPI連携が容易です。conetsでも最も多い連携パターンのひとつです。
QQ6. 社内エンジニアがいなくても運用できますか?
構築には専門知識が必要な場合がありますが、運用(日々の微修正など)は非エンジニアでも可能です。最初は専門家に構築を依頼し、徐々に社内で内製化していく進め方を推奨しています。
QQ7. 無料プランでどこまでできますか?
Difyのクラウド版は無料枠がありますが、AIのモデル利用料などが制限されます。n8nのクラウド版は有料ですが、デスクトップ版やセルフホスト版は無料(商用利用には条件あり)でフル機能が試せます。PoC(検証)段階では無料枠で十分です。
QQ8. どちらから覚えるのがおすすめですか?
中小企業の実務担当者であれば、まずはn8nをおすすめします。日常業務の「面倒くさい」を直接解決できるため、学習のモチベーションが続きやすいからです。
まとめ
Difyとn8nは「競合」ではなく「共創」の関係です。まずはn8nで「手足」となる定型業務を自動化し、次のステップとしてDifyの「脳」を組み込むのが成功の近道です。
ツール導入を目的にせず、業務プロセス全体の再設計(BPR)を行うことが、生産性向上への最短ルートとなります。
Difyは「脳」、n8nは「手足」。
そして、中小企業が最初に鍛えるべきは「手足(n8n)」です。
まずは目の前のメール転記、リマインド、ファイル整理といった「作業」をn8nに任せてください。
それだけで、社内の空気は変わります。「自動化って便利だね」という実感が生まれて初めて、Difyという「脳」を活かす土壌が整います。
どちらか一方を選ぶ必要はありません。大切なのは、「今の自社に必要なのは、手足か、脳か?」という正しい順序を見極めることです。
無料相談の案内
- 「ウチの会社なら、具体的にどの業務からn8n化できる?」
- 「Difyを入れたいけど、社内データがぐちゃぐちゃで不安」
- 「kintoneと連携させて、業務を丸ごと自動化したい」
このような課題をお持ちなら、まずは現状の業務フローを整理するところから始めませんか?
conetsの無料相談で得られる価値
- 貴社の業務における「n8nで即解決できる領域」を5分で棚卸し
- Difyとn8n、どちらから導入すべきかの優先順位付けとロードマップ
- コスト削減効果(時間・金額)の概算シミュレーション
- セキュリティを考慮したシステム構成のプロ視点アドバイス
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